インハウスSEOとは、自社サイトのSEOを外部のコンサルタントに頼ることなく社内で運用することを意味します。
過去において、SEOのノウハウはネット上にあまり公開されていませんでした。そのため、インハウスでSEOを運用していくことが非常に難しい状況でした。
最近では、SEOに関するノウハウや対策方法など、インターネットで検索するとすぐに必要な情報が手に入るため、インハウス化を検討する会社も増えています。
また、SEOをインハウス化することのメリットも大きくなっています。
目次
インハウスSEOのメリット・デメリット
インハウスのメリットは、施策のスピードが早いこと、社内にノウハウがたまる、そしてコストが安いことです。
自社のビジネスと目標に対する深い理解を活かして、SEO戦略を迅速かつ柔軟に調整することが可能です。また、デメリットとしては、社内にSEOの人材が必要になることや社内で育成するためのコストがかかります。
施策スピードで成果を上げる
AIの登場により、どの業界でも変化が早くなっています。
SEOも例外ではなく、ChatGPTやSGE(Search Generative Experience)と呼ばれる新しい検索インターフェースの登場により、SEOの戦略変更も余儀なくされます。
また、コンテンツの品質がより重要になるため、いかにスピード感を持って施策のPDCAを回していくかが大切です。
インハウスSEOのメリットとして、今日にでもチームで話し合って戦略を見直したり、コンテンツ改善ができます。アウトソースしていると、次のMTGまで1ヶ月かかったりと圧倒的に施策のスピードが遅くなります。
インハウスSEOの準備と流れ
SEOのインハウス化までの流れを解説します。まずは、①最低限のSEO知識を身につけておく必要があります。検索エンジンの理解やSEO対策ではどんなことをするのか?
SEOの基礎知識を学べる書籍やウェブサイトはたくさんありますので、その中からいくつか選んで最低限の知識を身につけておきます。
次に、②分析環境の整備です。インハウスでは、自分達で順位計測やレポートをまとめる必要があります。そのため、計測できる環境を整備します。
次の③レギュレーションの作成とは、SEO対策のルールを作ることです。このシートを作成して社内で共有します。
最後に、④レポートフォーマットの作成です。計測している順位や流入数を定点監視できるレポートを作成します。これらの準備が完了したらSEO対策の流れにそって開始をしていきます。
①SEOの学習方法
SEOの学習において、まずはSEOを体系的に学べるサイト、書籍や電子データ(PDFなど)で学習します。
SEOの学習においては、検索エンジンの仕組み、検索アルゴリズムの理解、SEO対策の流れ、具体的なSEO施策の理解について、最低限学習しておく必要があります。
SEOで学習しておくべきポイント
アルゴリズムとは、検索エンジンの評価基準です。また、検索エンジンの思想を理解して、SEOでは何が重要なのかを学習します。
SEO対策する場合の流れを学習します。キーワードマーケティングや戦略立案など、どのようなプロセスでSEO対策を運用するのかを学習します。
具体的にSEOの課題を抽出する方法やチェックするべきポイントを学習します。また、テクニカルSEO、コンテンツの改善方法についても学習します。
②分析環境の整備
SEOでは、①順位計測、②トラフィック計測、③競合・キーワード分析、④課題発見についての分析環境を整備する必要があります。
順位計測ではGRC、トラフィック計測ではGA4、競合・キーワード分析では「semrush」か「ahrefs」、課題発見ではサーチコンソールというツールを利用するのが一般的です。
- 順位計測:順位計測とは、自分たちのサイトのキーワード順位を日々計測することです。順位ツールには、低コストで導入できるGRCがおすすめです。
- トラフィック計測:サイトの流入数がどのように変化しているのかを計測します。SEO実施後の変化やコンテンツ改善によるエンゲージメントの変化などをGA4で追っていきます。
- 競合・キーワード分析:競合がどんなキーワードで流入数を獲得しているのか、関連ワードやキーワードの検索数を分析します。代表的なツールは、semrushやahrefsです。
- 課題発見:Googleが無料で提供しているサーチコンソールを導入します。流入キーワード順位やクリック数、サイト内で発生している課題を発見することができます。
順位計測 – GRC
インハウスSEOで順位を計測する場合、GRCというツールがおすすめです。GRCとは、PCにツールをダウンロードして利用する順位取得ツールです。
特徴としては、低コストで大量に順位を取得できることや、特定キーワードの上位サイトの変動も見ることができます。
デメリットとしては、1つのPC対してGRCが1つ必要になるため、チームで利用する際には非常に不便です。また、MacOSにはダウンロードできないという特徴があるため、運用方法を工夫する必要があります。
トラフィック計測 – GA4
トラフィックの計測ではGA4を利用します。GA4とは、Google Analytics 4の略称です。Googleが提供するウェブ分析ツールの最新バージョンであり、以前のバージョンであるUniversal Analytics(UA)の後継となります。
GA4は、ウェブサイトやモバイルアプリなどのデジタルプロパティのトラフィックやユーザー行動を追跡し、分析するために使用されます。ユーザーがサイトやアプリ内でどのように動き回り、どのコンテンツが人気なのか、購入やコンバージョンに至るまでのユーザーの経路など、さまざまなデータポイントを収集することができます。
▼ GA4についてもっと調べたい方はこちら
競合・キーワード分析
競合サイトがどんなキーワードで流入数を獲得しているか、ニーズの高いキーワード抽出など、競合や市場の分析にsemrushやahrefaというツールを利用します。
Semrushは、競合分析やキーワードリサーチ、ウェブサイトのトラフィック分析など、幅広いデジタルマーケティングの活動に役立つツールです。
Ahrefsは、主にSEOとリンクビルディングに焦点を当てたツールで、ウェブサイトのバックリンクや検索エンジンのトラフィックデータに関する情報を提供しています。
課題発見 – サーチコンソール
サーチコンソール(Search Console)は、Googleが提供する無料のウェブマスターツールです。ウェブサイトのパフォーマンスを監視し、最適化するためのツールです。
サーチコンソールを利用することで、サイトにどんなキーワードでユーザーが訪れているのか、そのトラフィックの推移を確認することができます。また、サイト内で発生しているエラーも確認することができます。SEOをはじめる上では、必ず導入したいツールです。
③レギュレーションの作成
インハウスSEOでは、社内のSEOルールを統一する必要があります。SEOのルールを知らずにコンテンツを改善して、評価が下がってしまうケースはたくさんあります。そのため、SEOのレギュレーション作成が重要になります。
レギュレーションとは、SEOの課題をチェックするためのシートです。このシートを元に、自分たちのサイトの課題を発見したり、コンテンツを作成します。
現在では、インターネットで検索するとSEO施策についてのチェックポイントを簡単に調べることができます。それらのチェックポイントを1つのシートにまとめて、SEO対策が実装されているかチェックをします。
また、社内で共通のルールでSEO対策するためにも、レギュレーションを社内に共有する必要があります。
④レポートフォーマットの作成
SEO施策を実装したあとは、順位やトラフィックの効果検証が必要になります。
GRCで取得した順位を日々定点監視しやすいようにレポートをまとめたり、GA4のデータについてもデイリーで進捗が確認できるようにレポートをまとめる必要があります。
レポートフォーマットは、BIツールやLookerStudio、スプレッドシートなど社内で共有しやすいフォーマットを選定します。
SEO対策の流れ
SEO対策は、①キーワードマーケティング、②SEO戦略、③課題抽出、④施策立案、⑤効果検証の5つの流れで構成されています。
それぞれ、①どんなキーワードにニーズがあるのか?、②どのキーワードを対策するのか?、③SEOの課題は?、④改善するための施策は?、⑤SEO実施後の順位やトラフィックの変化は?という観点をSEO対策でみていきます。
▼SEO対策の基本的な流れ
①キーワードマーケティング
キーワードマーケティングとは、自社のビジネスやサービスに関連するキーワードを一覧化して、ポテンシャルを調査するものです。
その業界でユーザーが検索するキーワードを洗い出し、現状の順位を取得します。一般的なCTRを掛け合わせて現状の想定トラフィックとポテンシャルを算出します。
ポテンシャルというのは、仮に1位を獲得できた場合のトラフィック数で、順位を上げることで獲得できる伸び代を表しています。ポテンシャルを計算することで、どのカテゴリを戦略的に狙っていくのかを可視化することができます。
②SEO戦略
次に、キーワードマーケティングを元に、SEOの戦略を決めます。戦略を決める上で、重要な軸が大きく3つあります。
1つ目は、ポテンシャルで、これは、単純に順位を伸ばす余地があるもの。
2つ目は、難易度です。キーワードの検索数が多いワードは、難易度が高くなる傾向がありますし、医療系ワードに関しては、専門機関でないと上位表示できないケースもあります。また、競合他社も上位に上がっていないワードは難易度が高いと推測することもできます。
3つ目は、CVRです。ポテンシャルが高くても、売上に直結しないキーワードでは意味がありません。ただし、CVRを確かめるためにはリスティング広告のデータが必要になりますので、通常はポテンシャルと難易度を考慮して戦略を決定します。
③課題抽出
SEO対策で課題を抽出するためには、SEOのレギュレーションを作成する必要があります。SEOレギュレーションとは、SEOの課題をチェックするためのシートです。
現在では、インターネットで検索するとSEO施策についてのチェックポイントを簡単に調べることができます。それらのチェックポイントを1つのシートにまとめて、SEO対策が実装されているかチェックをします。
また、サーチコンソールでサイトの課題をチェックすることもできます。サーバーエラーやサイトの応答速度など、課題になっている項目を抽出します。
▼SEOのレギュレーションシート
④施策立案・実装
次に、抽出した課題に対してどのように改善するかをドキュメントにまとめます。また、施策リストの一覧表を作成し、優先順位を決めて施策を実装していきます。
優先順位の決め方は、サイトの運用によって異なります。基準としては、開発工数、重要度(重要度の高い施策例、ページの読み込み速度、重複ページ、ユーザビリティ、コンテンツの質、内部リンク、スパム改善)を基準に優先順位をつけます。
開発工数が小さく、重要度の高い施策の優先順位が高くなります。
▼施策の一例
⑤効果検証
施策を実装したあとは、トラフィックの計測や順位の効果検証を行います。
トラフィックは、GA4(Google Analytics 4)など、Web解析ツールを利用します。順位計測は、GRCなどの順位チェックツールを利用するのが一般的です。
SEO対策の実装後は、すぐに順位変動はみられませんが、急激な順位低下が発生した際は、サイト内に問題がある可能性が高いので、その問題点を見つけ出し、改善する必要があります。
▼ランキングレポート
よくある質問
執筆者:西山 隼人
サイバーエージェントで約100社以上のSEOをコンサルティング。価格.com、食べログでインハウスSEOを担当。ウエディングパークで、SEO・UIUXのマネージャーとして集客全般の責任者を担当。大規模サイトのグロースが得意分野。
検索エンジンはどのようにして、検索結果を表示させているのか、そのプロセスを学習します。クロールや、インデックス、ランキングについて学習します。